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損益計算書の数字は、社長ひとりでつくることができない
A社は、パチンコ店とパチスロ店を経営する会社です。
10年ほど前、父親の後を引き継ぎ、社長に就任しました。
社長が最初に取り組んだのが、貸借対照表(バランスシート)(以下「B/S」)の科目を変えることです。
B/Sは、社長の意思で変えることができます。
パチンコ店は、数多くの種類の景品を在庫で持っています。例えば生活雑貨の在庫だけでも、2000万円くらいありました。
しかし、毎月そんなにたくさん雑貨が景品として出るわけではありません。
そこで、まずは雑貨の在庫を半分にしました。それだけで 1000万円分減ることになるわけです。
雑貨の在庫圧縮を機に社長は、店舗が建っている事業用の土地(店舗用の土地)も売却しました。
リースバックにすれば、 B/Sには計上されません。
リースバックとは、事業用資産を売却した上で、自社で売却した事業用資産をそのまま使用し続けながら買い主に使用料としてリース料を支払う方式です。
リース料は、損益計算書の費用科目として計上でき、土地を売却して得たお金で借金の繰り上げ返済をしたので、借金を少しずつ減らしていくことができました。
土地は、購入価格よりも売却価格のほうが安かったので、本業で利益をしながらも、売却損として利益を圧縮することもできました。
さらに、勘定科目の取り方を変えたことで、借入金は半分に減り、支払利息も6割削減することができました。
そして、店舗数も5店舗から8店舗に増加し、まだ担保はすべて外れてはいませんが、新規融資に関してはすでに無担保・無保証です。
担保が外れるのもそれほど時間はかからないでしょう。
社長は、父親から事業を継承する以前、サラリーマンをしていたことがあり、そのときに財務諸表の基本的な知識は勉強したそうですが、「なんとなく数字を読めても、使い方がわからないと意味がない。サラリーマンとしての財務諸表の見方と、社長としての財務諸表の見方はまったく別物である」と実感しています。
会社の利益である損益計算書(以下「P/L」)の数字は、従業員全員が協力しないと改善しません。
一方で、B/Sの数字は、社長が工夫することが可能です。
それにもかかわらず、P/Lの数字しか見ない社長が多くいます。
私の経験から言うと、B/Sの数字を見て経営をしている社長は、かなり少ないと思います。
お金を手元に増やす方法として経費削減ももちろん有効ですが、千万単位、億単位の経費削減はなかなかできるものではありません。
しかし、 B/Sの構成を変えることで、千万単位、億単位のお金をつくることが可能なのです。
会社が現金を調達する3つの方法とは
会社が現金を調達するにはどうしたらよいでしょう。実際のところ、方法は、次の「3つ」しかありません。
- お客様から
- 株主から
- 金融機関から
しかし、いつまでもお客様や株主から調達できるとはかぎりません。
なぜかというと、世の中つまり経済動向によってお客様・株主の懐具合も変化するからです。
よって、社長は、様々なシチュエーションを想定してリスクへッジをしなければいけません。
そのリスクヘッジを容易にできる手段として、銀行からの融資があります。
銀行からは「いざお金が必要になったとき」つまり「困ったとき」にいきなり調達できるものではありません。
その会社の定量面だけでなく定性面、長年の付き合いによる信頼性が大きく関わってきます。
ですから、支払利息はリスクに備えた経費だと思って、普段から銀行との取引を大切にしておきましょう。
最後に、この会社は、どのように変化したのかまとめておきましょう
◎問題点
・余分な在庫を抱えていた。そのためキャッシュフローが悪化し、資金繰りに困っていた。
・P/Lばかり気にする経営になっていた
◎解決策
・B/Sの資産を圧縮(雑貨商材の在庫を半減、事業用の土地を売却)
・土地を売却しリースバックすることでB/S上の資産からP/L上の経費になった
きょうもここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
あなたの不動産投資事業が成功することをお祈りしております。
トランクルーム大家より。