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料金前払いのビジネスモデル(1)CCCに着目し、時間差で儲ける
時間差で儲ける
ビジネスの利益の源泉は販売利益だけでは無いという話です。
今更ですが、製造業、流通業、販売業で利益を上げるためにはどのようなステップを経て利益の前段階の売上を得ることができるのでしょう?
- 仕入(支払)
- 生産及び在庫(資金を寝かせる期間)
- 販売(代金を得る)
こんな感じでしょうね。
それぞれの段階でお金の出入りに時間差があります。
- 仕入(支払)
- 仕入れたものはその場で代金を払うことは法人取引ではまれです。翌月末払いなどの時間差でしばらくしてから代金を支払います。支払うまでの期間、払うべき代金分を一度「仕入債務」と名づけて管理します。この時間差のことを「サイト」といいます。
- 生産及び在庫(資金を寝かせる期間)
- 在庫として寝かせている間はしばらくの間、材料や部品や賃金などで費用が発生し、まだ売上も立たないので仕入時点とこの時点の費用は回収できません。その分の金融費用が発生します。
- 販売(代金を得る)
- 販売しても、現金掛け値なし!の売り方を除くとほとんどの商売ではお客様はすぐに代金を払ってくれるとは限らないので現金が入ってきません。仕入のときとは逆に、受け取ることになっている代金分を一度「売上債権」と名づけて管理します。
通常のビジネスですと、モノの製造や販売まで時間がかかります。仕入先、従業員等に代金を支払って、後に物が売れて代金を回収、という順番になりますので、代金回収までの間の運転資金が必要となります。銀行はここの運転資金ニーズを捉えて貸付先を拡大させます。
CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)とう指標
お金を払ってから事業活動の結果資金を回収するまでの時間を計算する指標がありまして、キャッシュ・コンバージョン・サイクル略してCCCといいます。CCCは以下の式で計算できます。
CCC(日)=売上債権回転期間(日)+棚卸資産回転期間(日)-仕入債務回転期間(日)
CCCがプラスとしたら運転資金が不足することになり、資金調達の必要が出てくるため金融費用がかかることになります。
CCCがマイナスの場合は支払の前に売上金の入金があるということであり、CCCがマイナスの状態のビジネスモデルを構築できますとどんどんキャッシュが貯まることになります。
CCCを短縮するための工夫
小売業
小売業は日銭商売ですから、CCCはとても小さいか、またはマイナスであることが通常です。
マイナスになっていないとしたら何か理由があります。多くの場合、以下のどれかです。
- 棚卸資産が過大で無い限り、つまり不良在庫まみれになっている。
対策:在庫を早く処分し、現金化して次の事業の原資とする。 - 商品仕入から店舗への商品陳列までの時間がかかりすぎている。
対策:- スタッフの業務フローを見直し、商品陳列までの日数を短縮する。翌日または翌々日までに陳列できることが理想。無駄な工程が無いか、ゼロベースで見つめなおすこと。
- 買取仕入れがメインの仕入形態の場合は、仕入条件の変更を試みる。「買取をやめ委託販売形式に切り替える」「支払サイトを延ばす」など。
- そのほかは、CF改善のロジックツリーを参照。
製造業
製造業では仕入から販売までの期間が長いので、CCCはプラスになることが多いですね。アップルのように製造業ながらCCCの値がマイナスなんていうところもあります。これは、強力なブランド力を背景に販売先に前払いを要求しているためです。
デル(DELL)の場合
Dellは、BTO(Build to Order)という仕組みを構築しました。注文を受け代金を受領してから数日で生産を終了し顧客に届ける仕組みです。
小売業に見る日銭商売モデルを製造業に組み込みました。小売業的な日銭商売であれば商品を仕入れて売ればよいのですが、それだと売れるかどうかもわからない中で買取仕入を行うことになり、付加価値を捨てることになります。
そこでデルはダイレクト販売を始めることで製造業でありながら小売業的な日銭商売を実現。さらに注文を受け代金を受領してから数日内に生産を終了させ消費者に届ける仕組みを構築したのです。
これにより製造業にありがちなCCCがプラスの状態からCCCをマイナスにすることに成功しました。
コストコ(COSTOCO)の場合
コストコは小売業です。当然ながらCCCはマイナス。ですが大量仕入の倉庫型ビジネスを展開しており、次の点で競合他社比優位性があります。
- 高所得者層向け商品で構成。品数を絞る。大量仕入で低価格化を実現、商品の売れるスピードが速い。
つまり、売上債権回転期間と棚卸資産回転期間が短い。 - 大量仕入をすると店頭にならぶまでのタイムラグが大きくなる。コストコは大量仕入の倉庫型。仕入条件がよく、店頭に並ぶまでの時間が短い。
つまり、仕入債務回転期間が長い。棚卸資産回転期間は短い。 - 会費制で獲得した会費で店舗運営するようになっている。その分商品を非常に低い粗利で販売でき、その低価格がまた顧客を増やす。
つまり、CCCがマイナスであることでつみあがるキャッシュがさらに増える。 - 会費は前払い。キャッシュが積みあがるのでそのキャッシュを元手にどんどん出店。会員増につながり、キャッシュの蓄積スピードが増大する。(図参照 オリジナルはo-flexさんのサイトに掲載されています)
■画像をここに http://blog.oflex.jp/blog/wp-content/uploads/2014/02/22ee4c389b26ae8d08b23c3e3109a7bb.jpg ■
アメリカン・エクスプレスの例
ここにもCCCをマイナスにして儲けている例が。
まだ規模が小さかった頃、アメリカン・エクスプレスはトラベラーズ・チェックを発行。
そこで得られた現金を他の金融事業への投資に充当。
トラベラーズ・チェックの前払い収入に加え、旅行者が余ったチェックを次回旅行分として家の中に退蔵してくれ金額も馬鹿にならなかったとのこと。
コスモス薬品の場合
ドラッグストア業界で急速に拡大しているコスモス薬品。業界トップのマツモトキヨシのCCCが13.2日、これに対しコスモス薬品はマイナス26.0日です。
売上高成長率は年16%。営業利益成長率は年34%。すばらしい。年間60店舗のペースで出店しながらほぼ無借金。
キャッシュ創出力の高い卸売業に依存度を高めた結果CCCがマイナスに。コスモス薬品は加工食品卸売業というキャッシュ創出力の高い分野の取扱高が大きい。コスモス薬品の食品構成比は52%に達しており、キャッシュに余裕ができ、成長資金に困らない状況が実現できている。
食品を多く扱うには食品販売のノウハウが必要で競争も激しいため単に安売りをすると赤字になる。
取引を行うことによって小売業にマイナスのCCCを提供できる卸売業は加工食品卸売業がダントツで、ついで一部医薬品卸。日本独特の現象で、他国ではこのような特性を備えた卸売業は存在しない模様。
最後に、CCCは小売業だとマイナスで製造業だとプラスというのは業界構造上決まることです。マイナスだから良いとか安心とかいうことではなくて、同業他社比どのくらい小さいのかが優劣を決めます。
参考:http://www.jmca.jp/column/fukayomi/fukayomi1.html
参考:http://blog.oflex.jp/blog/%E6%99%82%E9%96%93%E5%B7%AE%E3%81%A7%E5%84%B2%E3%81%91%E3%82%8B%E7%9F%A5%E6%81%B5/
参考:http://www.slideshare.net/shinichitanaca/ss-7455110
参考:http://www.njh.co.jp/magazine_topics1/at26/
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