リフォーム代には経費にできるものとできないものがある。CFに影響。不動産投資における税務上の注意点 | vol.343

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「修繕費」と「資本的支出」の違いとは


苦労して手に入れた物件も、年月が経てば雨風にさらされて屋根や外壁、共用部の廊下などに汚れが目立ったり、給排水設備などさまざまな設備も老朽化し、修繕をしなければならなくなります。

長期間安定したインカムゲインが見込める1棟買いでの収益物件であれば、屋根や外壁、エントランス、廊下および階段などの共用部分、エレベーターや給水ポンプといった機械設備など、さまざまな部分で定期的なメンテナンスと修繕は必須となります。

そのような物件の補修、修繕、リフォーム等にかかる支出は、当然すべて経費になると思われるでしょう。
しかし、税務上は「修繕費」と「資本的支出」の判断をしなければなりません。

税務上「修繕費」に該当すれば、一度に全額を経費計上できますが、「資本的支出」に該当すると、全額を経費計上できるわけでなく、いったん資産計上したうえで減価償却をしていく必要があります。

あなたのそのリフォーム、経費にできるかどうかを判断する基準とは?

このような「修繕費」と「資本的支出」の違いは、単に修繕やリフォームという名目によるのではなく、その実質的な価値が増加しているかどうかで判定されるため、その取り扱い方法について税務署と見解が相違することがあります。

そこで、「修繕費」と「資本的支出」の判断をする目安として、国税庁では以下の例示を示しています。詳しくは国税庁のHPをご参照ください。

・資本的支出の例示

法人(※)がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。

  1. 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
  2. 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
  3. 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合、その取替えに要した費用の額のうち、「通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額」を超える部分の金額

(注)建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。
(※) 法人でなくとも、個人事業主として不動産賃貸業を行っている場合は法人に準ずるものとしてみなされますので同じ考え方が適用されます。



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・修繕費に含まれる費用

法人(個人事業主は上の※参照)がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となるのであるが、次に掲げるような金額は、修繕費に該当する。

  1. 建物の移えい又は解体移築をした場合(移えい又は解体移築を予定して取得した建物についてした場合を除く。)におけるその移えい又は移築に要した費用の額。
    ただし、解体移築にあっては、旧資材の70%以上がその性質上再使用できる場合であって、当該旧資材をそのまま利用して従前の建物と同一の規模及び構造の建物を再建築するものに限る。
  2. 機械装置の移設(に要した費用(解体費を含む。)の額
  3. 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額。
    ただし、次に掲げる場合のその地盛りに要した費用の額を除く。

    1. 土地の取得後直ちに地盛りを行った場合
    2. 土地の利用目的の変更その他土地の効用を著しく増加するための地盛りを行った場合
    3. 地盤沈下により評価損を計上した土地について地盛りを行った場合
  4. 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額。
    ただし、その床上工事等が従来の床面の構造、材質等を改良するものである等明らかに改良工事であると認められる場合のその改良部分に対応する金額を除く。
  5. 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額

・少額又は周期の短い費用の損金算入

一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等が次のいずれかに該当する場合には、その修理、改良等のために要した費用の額については、修繕費として損金経理をすることができるものとする。

  1. その一の修理、改良等のために要した費用の額が20万円に満たない場合
  2. その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合

(注) 本文の「同一の固定資産」は、一の設備が2以上の資産によって構成されている場合には当該一の設備を構成する個々の資産とし、送配管、送配電線、伝導装置等のように一定規模でなければその機能を発揮できないものについては、その最小規模として合理的に区分した区分ごととする

金額を基準として経費扱いできるかどうか判断する方法とは?

つまり、修理や補修に要した支出が20万円未満であれば、たとえ「資本的支出」に該当するものであってもすべて「修繕費」として経費計上することが可能です。
(ちなみに、現在の安倍政権下では租税特別措置法の定めにより、30万円未満であっても修繕費として経費計上することが認められています。租税特別措置法 第67条の5《中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例》関係 この法律は毎年延長されています。平成30年の通知はこちら。中小企業等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延長(財務省ホームページより)

少額の設備部品を修理したり、新品に交換するようなケースは、全額経費にして問題ないとうことになります。
そして、概ね3年以内の周期で定期的に実施されている修織や改良や明らかに原状回復に該当するものも、全額修繕費とすることができます。

例えば、入居者が退去した場合の、壁や床等の原状回復費用はすべて修繕費に該当します。

・形式基準による修繕費の判定

一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として損金経理をすることができるものとする。

  1. その金額が60万円に満たない場合
  2. その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合

外壁塗装の場合には注意が必要

前述した国税庁の指針に基づいて会計処理していくことになるのですが、よく問題になるのが、マンションの外壁塗装をしたケースです。

元々の外壁の状態に復旧させる塗装工事の場合には、数百万円の支出になったとしても原状回復費用ということで「修繕費」になります。

しかし、外壁を新しく全面的にタイル張りにしたり、新たに防水工事をしたり、実質的に建物の価値を高めたりしたケースでは、「資本的支出」となり、その場合は資産計上したうえで減価償却をしていくことになるので、修繕工事を行う場合は、工事内容等を確認したうえで事前に税理士に相談しておいたほうがいいでしょう。


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きょうもここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
あなたの不動産投資事業が成功することをお祈りしております。
トランクルーム大家より。



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